コトノハ

V6と三宅健くんについて綴るブログ。

春の光、夏の風〜映画 ハルチカの考察〜

 

真っ暗なスクリーンと誰かの息遣い。

観客は耳を澄ませる。

誰の息遣いだろう。どうして、こんなに弾んだ息遣いなのだろうと。

 

しばらくして、それが朝の通学路を走る橋本環奈ちゃんが演じる、穂村千夏の息遣いであることがスクリーンを見てわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

映画ハルチカは音をすごく大切にする映画であることはシーンが流れるごとにわかる。

 

 

日頃、私達はたくさんの音に囲まれて、たくさんの音が重なる中で生活している。

そのことで大切な音を聞き逃しているのではないか。

 

泣きながら歩く音、徐々に変わる足音のスピード。泣きながら走る音。
千夏の指を動かすぎこちない音。

春太がホルンをお手入れする音。
2人が幼なじみの友達であることに気付く、バスの窓に手をつく音。
2人が友達からちょっぴり特別な関係であることを意識する波の音と抱きしめた時のお互いの衣擦れの音。

 

どれも耳を澄まして聴くと、登場人物の感情を表す音だ。

 

 

廃部になっていた吹奏楽部を復活させようと意気込んだ日、真っ暗な部室で突然、春太が耳を澄まして、音を聴く。千夏も春太と同じように耳を澄ませる。連想する音をお互いに述べていく。音の大切さを教えてくれるシーン。

 

春太は周りの人が見落としてしまうような音や変化に気付くことができる人だ。

 

春太のそんな良さが吹奏楽部メンバーの心を救っていく。もちろん、千夏の心も。

 

千夏は言葉や自身の発する音が一番多い人物だと思う。吹奏楽で言えば、ソロパートが多いといったような。また、先頭を切って、周りを引っ張っていく良さがある。しかし、綱引きと同じで1人で引っ張ることには限界がある、バランスが崩れてしまう。ソロパートを引き立たせるにはベースの音が必要で、綱引きのバランスを崩さないためには支える人が必要だ。その役割を担っていたのが春太だっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的に佐藤勝利くん演じる上條春太は多くを語らない。そして、ちょっぴり気が弱い。

橋本環奈ちゃん演じる穂村千夏は負けん気が強い、自分の考えを口にして行動する女の子。

 

物語の中で、千夏は自分の気持ちだけではどうにもならないこともあるという挫折を知る。春太は自分の殻を破らないと大切な人を守れないことを知る。春太と千夏、それぞれが自分の壁を乗り越えようとする時、春太は千夏に、千夏は春太に手を差し出していた。初めは正反対だった、そんな2人の色が濃くなって、交わりあっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な吹奏楽部の部室で1人でホルンのお手入れをしていた春太がふと、手を止めて、目を瞑る。無言、無音。何を考えていたんだろうか。

 

勝利くんの長くて綺麗な漆黒のまつ毛が光に少しだけ照らされて息を呑むような感覚にも陥った。

 

私の一番脳裏に焼き付いているシーンでもある。春太が今までの優等生だった自分の殻を破って、大好きで大切な千夏ちゃんに光を当てようと決意する大切なシーンだ。

 

 

 

 

 

 

 

ハルチカを見ていて、学生時代の自分を思い出した。

大人になると、相手との関係性に白黒ハッキリつけようとしてしまう。だから、春太と千夏の友達とも恋人とも言いがたい関係が私には眩しかった。

自分の理想通りにはいかないこと。努力しても挫折をしたこと。

自分の殻を破りたいのに勇気がでないこと。

自分と正反対の人に支えられること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライマックスシーン。

コンクールで挫折を乗り越えられずにソロパートを失敗してしまい、暗闇にいる千夏に春太を筆頭に吹奏楽部メンバーが授業を抜け出し、千夏へ捧げる、「春の光、夏の風」

 

意を決した千夏がフルートを持って、教室を飛び出し、ソロパートに挑む。

失敗しても失敗しても、春太のホルンが千夏のソロパートへと誘う。

 

ラスト、ソロパートを乗り越えた千夏と春太が見つめ合い、笑い合いながら、この映画は終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、2人は何を感じて何を思っていたのだろうか。

この先の2人の関係性はどうなるのだろう。

 

春太は自身の奏でる音を千夏の心に届けた。

千夏は春太の奏でる音をキャッチして、フルートの音を奏でた。

多分、2人は言葉ではわかりあえない関係性だ。けど、音を通じてわかりあえることができた。この先、2人が成長して、言葉や音という音色が変わっても、お互いの音に耳を澄ますことができていたら、それだけで2人の関係性はこれからも続いていくだろう。